東京のトンボ
 都内の小学校や公園などに「トンボ池」というのがあるのをご存知でしょうか?その名の通りトンボを育成するための池のことですが、これは小規模の「ビオトープ」を作ったものです。
 ビオトープとは、人間が手を加えない自然のままの環境系を作ることで、ありのままの自然を人工的に再現しようとするものです。したがって、鯉や金魚などを放したりせず、あくまでトンボをはじめとする生物が、自分たちでやってくるような環境を作ります。
 もっとも、トンボの幼虫であるヤゴは、水草の下で活動しているので、一見したところ生き物一匹いないようにも見えます。しかし、その中には自然の生物が息づいています。ヤゴのほかにも、タニシやイトミミズなども生息しており、カエルが産卵に訪れたり、蜂やアブなどが水を飲みに来たりします。また、春から秋にかけては、ヤゴの抜け殻をあちこちに見つけることができるでしょう。
 ただ、基本的に観賞用の池ではないため、不幸なことに「乱雑で汚い池」という誤った印象で見られてしまうことも多いようです。しかし、よくよく注意深く観察してみると、これらの多彩な生き物がたくさん生息していることに気づくはずです。
 ついつい眼にするものは害虫ばかりのように思える東京の都心ですが、意外と身近な場所にもトンボ池があるはずですから、休日などに探してみてはいかがでしょうか。